気をつかう余裕なんて

これ以上、今の私は持ち合わせていない。

私は、言われたことをやっているだけで。
そりゃ、言われたことの10％もやってないかもしれないよ。
でも、今はやってる。やってた。
普通にやっていただけだ。

それで、何故怒られなくてはいけないんだろう。
言われた通りにはやっていないよ。
どんなふうにやれと、そんな指示は一言も受けていないから。
言われた通りに、やれるはずがない。

部屋の掃除。

あんたばたばたやっていたでしょう？
はい、やってましたよ。
8時すぎくらい？　やってましたよ。
最初は洗濯物を放り投げて、少し憂さ晴らしして。
それ以外は普通にやっていただけ。

隣の部屋の妹が、布団に入って30分経っても寝られずにいる。
それが私のせいだと？
何でさ。
確かに隣の部屋でがさがさやっていたのは否定しない。
でも、普通にやっていたんじゃない？
私がここで言いたい普通っていうのは、
まず床に散乱した紙を、
捨てるものと保存しておくものに分けて、山積みにして。
そこまでしかやっていないけど。
つまり、苛立ちをぶつけるみたく、
特別がたがたやっていたわけじゃないってこと。

むしろ、そっとやっていた節もある。
洗濯物投げて、その近くに蛾がいることにぎょっとして、
窓を開けてびくびく作業していたもの。

一回、持っていた紙をばさっと床に落っことして、
わあって、悲鳴を上げたは上げた、
けど、騒音になるほどではないでしょう。
他人と話すよりは小さかったはず。

で。
ひとに迷惑かけてるよ。
何故そんなことを言われなくちゃならないの？
それなら、私だってあなたに迷惑かけられているって、
言いたいですよ。
私が原因にしろ、あなたにたまったその苛立ちで、
私は迷惑しています、って。
あんな、イライラで満たした言葉で言われたら、
洗濯物放り投げたくもなるわ。

そもそも、私の部屋だし私の服。
一時私の部屋に私の服を散乱させて、
どこがいけないことなの？

それに、『ひと』ってどういうことですか。
他人という意味ですか。
人間という意味ですか。
抽象的すぎて分かりませんね。
冷笑を浮かべたいものです。

その、部屋の惨状を見たあなたは言いました。
何これ。
蔑んだように言いました。
じゃあ訊きますが。
何が、何これなのですか。
これ、が示すものは何ですか。

どういうこと、とか何、とか。
言っているほうは楽ですよね。
最も完結に、尋ねることができる。
けれど、問われたほうは困る。非常に困る。
何せ、訊かれた事柄が、伝わりませんから。

答えられるわけがない。
推測して答えても、そうじゃないと怒られる。

何が訊きたいの。
そこに突っ立っている、あなたが邪魔。
非常に邪魔。果てしなく邪魔。
やろうとしていることがやれなくなります。

どうしてそのバタバタを、
夜じゃなく昼間にやれないのか。
あなたはそう訊く。
では、
なぜ夜の間際に、部屋を綺麗にしろなどと言うのですか。
午前はともかく、午後は私も家にいました。
じゃあ、昼間に言えば良かったではないですか。
その激情で。

極めつけに。
悪いけど、寝るのはこれから11時ね。
何故そうなるのですか？
全く、繋がりが見えません。
『ひとに迷惑をかける』時間に、騒がしいから？
そんなことしていないのに、どうしてそうなる？
悪いけど。
本当にそう思っているのなら、どうして言う？
私が承諾していないのに、
私の行動を制限されるいわれはない。
だから、従いませんよ？


よく、私の母は『普通じゃない』と言う。
普通って何だろう。
普通分かるでしょとか、よく言われる。
あなたが普通なら、あなたは分かるでしょう。
私が普通でも、私は分かるとは限りません。

普通って何だろう。
何とか障害とか、そう呼ばれる子供のことも、
あの子普通じゃないよ。
と言う。
普通って何だろう。

そもそも一人一人違うのに、
人類共通の普通なんて作れるわけがない。
障害を持っていても、
それがその子の普通じゃないの。

私は普通じゃない。
そうよ、普通じゃない。
障害を持っているとか、人を殺したことがあるとか、
そういうわけでは決してないと思う。
だけども、私はそれで良いと思う。
私は普通じゃない。それで良い。

周りと違うからこそ、楽しいことがある。
母の言動は、好きになれない、楽しくないところもたくさんあるけど。
自分が普通じゃないことは、楽しい。
どんどん変人になるのも夢なのよ。
受け入れてもらえる変人になること。
変だ変だと、嫌な目で見られる変人ではなくて、
変だよーと、温かく笑ってもらえる変人に。

そうなりたいって思う私は、
もう既に変人。
これからもっと、
変人を極めていけるかしら。


とりあえず、何故なのだろう。
生活面の事項で、言われることはたくさんあるけど、
それをやるとどうしても怒られるの。
だったら、言われたことはやらないほうが良い？

何やっているんだろう、私。
右手に鋏なんか持って。
切っ先を表皮に突き立てる
もう少し、爪でひっかいておけば、
明日あたりからひりひりするのだろうね。

それが楽しい。
自分を傷つけて楽しい。
生きているって、感じられる、この痛み。

でも、皮膚を少しひっかいた程度で満足できるんだ。
良いじゃん、私。
単に臆病なだけっていうのもあるけど。
良いじゃん、私。

病院行って、包帯巻いて、
そんなことしなくてすむ、
その程度で満足できる。

良いじゃん、私。


変人万歳だわよ。